フィルムクリーナー


 先日、”写真展示室”に30年以上前の羽田空港で撮影した写真をアップしました。 古いモノクロのネガで、特に気を遣って保存していたわけでは無く、箱に入れて押入の 天袋に突っ込んであっただけでした。肉眼で見ただけでは、それほど痛んでいるようには、 見えなかったのですが、カットによってはかなり痛んでいました。ルーペでちょっと 見ただけでは気がつきませんでしたが、スキャニングしたらひび割れがいっぱいで、 なんじゃこれ???となっていました。はじめは何なのかわかりませんでしたが、フィルムの ベース面(感光面ではなく、画像が反転しないで正しく見える面)に光を反射させてみると、 表面に細かく何かがついているのがわかりました。どうやらカビのようです。古いネガでもあるし、 保存状態が悪かったので,あきらめるしかないかとも思いました。しかし、あきらめきれず、何か 方法がないものかとインターネットで調べてみるとカビを取ることができる可能性がありそうな ことがわかってきました。

 このようなカビを落とすために、少なくとも水や洗剤などを使用してはならず、 何らかの薬品を使用することで、カビ除去ができそうだということがわかってきました。 ひとつの方法は、イソプロピルアルコールを使って表面をクリーニングすることです。この場合、 使用するのは100%純度のものが必要で、薬局で手にはいるようです。しかし、このアルコールの 入手に手間がかかりそうな様子なので、さらに調べてみました。すると、富士フイルムから、 その名もズバリの”フィルムクリーナー”が発売されていてこの薬品でもカビ除去ができること がわかりました。ただし、かなり高価な(250ml入りで6000円近い値段)薬品のようです。 高価なことが玉に瑕ですが、貴重な写真を救うためには背に腹をかえられません。
 
 しかし、ちょっと待てよ、スキャナにはゴミやキズを除去してくれる”DigitalICE”という便利な機能があったはずです。 ゴミを取ってくれるなら、表面に付着しているカビも取ってくれるのでは?と思いつきました。ただ、 この機能はカラーでないと使用できないので、モノクロフィルムである羽田の写真をスキャンしたときには、 OFFに設定してありました。ネガはモノですが、カラーネガと設定してスキャンすれば"DigitalICE” が使えるはずです。

 期待を込めて早速試してみました。しかし、その期待はすぐ裏切られてしまいました。 スキャンされた写真は、階調が崩れており、全く使い物にならない画像でした。もし、スキャニングすることで、 カビを消すことができるなら、スキャナメーカーはその効果をPRしているはずですが、そんなことは 聞いたことがありません。この方法はすぐあきらめて後日、新宿のヨドバシカメラへフィルムクリーナーを 買いに行くことにしました。
 店員さんに売り場を聞いて、すぐに品物を見つけることができました。参考にしたサイトの 記述では拭き取りにレンズクリーニングペーパーを使用することになっていましたので、これは 手持ちがありますので購入する必要はありません。しかし、せっかくきたので拭き取り用のペーパーを 買ってゆくことにして、値段の安かった不織布タイプのクリーニングペーパーとあわせて、レジに 精算のため持って行きました。ところが、このペーパーは毛羽がでますよ、お薦めは”ペッグパッド” というのがあります、といわれすぐ売り場に戻ってとりかえてきました。”ペッグパッド”は、とても 高い品物でしたが、貴重なネガを救うために必要なモノだ、と自分に言い聞かせて買ってきました。

 このフィルムクリーナーを使用してカビ落としを行った効果は、次の通りでした。

カビ除去前
一目瞭然、空の部分にひび割れのように
カビが発生してます。
 
フィルムのベース面をクリーニングした結果、
これだけきれいになりました。
 

カビ除去前
画面中央の上部にカビがあります。
 
ベース面のみカビ除去した状態です。
空の部分を見るとわかりますが、粒子が荒れているように
見えます。
ベース面だけでなく、乳剤面にもカビがあったので
両面ともにクリーニングしました。
乳剤面は柔らかいので傷が心配でしたが
それほどではありませんでした。
かなり改善されています。
 

 上の写真でわかりますように、フィルムクリーナーはカビ落としに絶大な効果がありました。 さらに、カビ落としだけでなく表面のクリーニングの結果、画像のざらつきも改善されたようです。 パンナムの747の方は、片側だけしかクリーニングしていないのでよくわかりませんが、両面をクリーニング したフレンドシップの方は、ざらつき感がかなり解消されています。
 私が行った手順としては、次のような方法です。まず、机の上にアクリル板を置き、表面をきれいに清掃して、 この上にネガを置いて作業します。ブロワーでゴミを吹き飛ばしたあと、フィルムクリーナーをネガの表面に 数滴垂らして、指の腹でこすり、カビを欠き落とします。この時、ネガがずれないようにしっかりと固定しておく ことが大切です。もし、ネガとアクリル板の間にゴミなどが入っていると、ネガがずれることにより 傷が付くおそれがあるからです。
 表面をこすっていると、クリーナーが蒸発してくるので、その時は またクリーナー液を垂らします。慣れてくると、指の腹でこすることで表面のカビのざらつきが感じられ、 カビが取れてくるとキュッキュッといった感じになるそうですが、私にはこの感じがわかりませんでした。 クリーナーを垂らして表面をこするのを何回か繰り返したあと、最後にペッグパッドでネガ表面の汚れを拭き取ります。
 最後の拭き取りにレンズクリーニングペーパーを使ってみましたが、これは、気をつけないとすぐ傷を付けて しまうことがわかりました。ペッグパッドでも傷が付くことがありますが、クリーニングペーパーよりも 気を遣うことは少なくて済みます。
 できるだけ傷を付けないように作業を行いましたが、どうしても多少の傷は付いてしまいます。しかし、 多少のキズであれば、レタッチソフトで修正できるので心配はありません。
 ほとんどあきらめていたネガが、クリーニングを行うことで、ここまで修復できることがわかったことは、 収穫でした。30年以上経過した古いネガが、まだたくさんありますので、無駄にしないで済みそうです。 ただ、これらの古いネガを今後活用することはないでしょう。それとも、このサイトに少しずつアップしましょうかね・・・。
'2005-8-9 記



   Homeへ戻る
最終更新日:2005年8月9日




Copyright(c)2003-2005 Gallery Blue Heaven all rights reserved.